その他雑記

夏の景色にノスタルジーを感じる理由

海より澄んだ青い空に立ち込める、真っ白い入道雲。
その下には田園風景。あちこちにセミの音が鳴り響く。

すだれの掛かった古い平屋。昼にそうめんをすすり、みんなでスイカを食べる。
外から風が通り抜けていく。風鈴がチリンチリンと鳴る。

などなど、夏を連想させる風景は他の季節よりも多岐に渡ります。そして私たちはそれらに哀愁(ノスタルジー)を感じます。
エンタメ作品にも夏を舞台としたものは数多くあります。最近は夏になると『サマーウォーズ』がやたらテレビで放送される印象です。

切ない思いの種類は沢山ありますが、こと季節に関していえば「夏」が段違いで哀愁を感じるのではないでしょうか。
それはなぜなのか、考察していきたいと思います。

夏の景色にノスタルジーを感じる理由

夏休みの経験

まず、他の季節と比べて夏を思わせる風物詩の数が特に多くあります。
川、海、バーベキュー、虫取り、夏祭り、屋台、花火、かき氷、スイカ、りんご飴、わたあめ等々。

以上に加えて、私たちは義務教育の中で夏休みを経験してきました。
夏休みの風物詩といえば、
宿題、自由研究、ラジオ体操、田舎での遊び、旅行、プール等々。

更に、夏休みは通学がないので、学生たちは約40日間の自由な時間を手にします。
この期間でいくつか思い出をつくられたことでしょう。

夏休みという勉強する毎日からの非日常。その期間限定の中で以上の多岐に渡るイベントの経験。
これらを思い起こすことで懐かしく、切なく感じることになります。

エンタメ作品からの影響

夏を舞台にした作品ならこれ、というものは数多くあります。
細田守監督をはじめ、アニメ映画は夏の季節ものが多数ある印象です。他にも、エモい分野なら『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』泣かせアニメの『Air』、タイムリープものの大作『STEINS;GATE』、ホラー・村落といえば『ひぐらしのなく頃に』や『屍鬼』。『新世紀エヴァンゲリオン』も一年中夏。野球ものも甲子園があるので必ず夏。と、挙げるとキリがありません。

小説や映画もキリがないでしょう。

個人的に、音楽が特に私たちの夏への印象をさらに強めていると思います。
音楽の教科書にも載っていた、井上陽水さんの『少年時代』はまさに夏の哀愁を感じさせるには十分な一曲です。
2000年頃にはWhiteberryがカバーしたJITTERIN'JINNの『夏祭り』が流行しました。
久石譲さん作曲の『Summer』も有名です。

以上の作品たちが表現している夏。これらを私たちは受動的に受け入れてきました。
制作者たちは、各々が思う夏を作品にのせて表現してきたと思われます。しかし、受け手の私たち(特に若い世代)は、実は夏を可視化させる経験をすることなく有名作品たちの情報のシャワーを浴びます。そして「夏とはこういうもの」という、ある種の影響(悪くいえば洗脳)を受けているのではないでしょうか。

コントラストの差が激しい

夏は一年の中でも一番高い位置にある盛りの時だそうで、その後は秋そして冬へと下っていく。その下る前という儚さがノスタルジーを感じさせるという意見がありました。
たしかに、何かと一番盛り上がるのは夏です。熱気とともにテンションも上がります。その感情とは、約一週間しか生きられない蝉のように、気づいたら終わってしまう夏休みのように儚いものなのでしょう。
暑い中に置いておく氷はすぐに溶けてしまいます。その独特の損失という情緒を感じられるのも夏の醍醐味だと思います。

その在るものが、線香花火のようにあっという間に消えてしまう。
その極端な様が夏への郷愁を感じる正体なのではないでしょうか。

極端。つまり夏の全てにおいてコントラストが強いのです。

色彩の観点から見ても、他の季節と比べて、夏の日差しが一番強いです。日差しは強いほどに、影を黒に落としていきます。漫画の作画でも、夏の影は黒いベタ塗りです。
光が強いほど闇も濃くなります。夏はそのような箇所が多く散見されるのでしょう。

夏は気温も高く、いかに涼しく過ごすか昔から様々な工夫がされてきました。涼むためにも氷は不可欠です。
そして氷のような見た目のガラス。ガラスは見ただけで冷たいものとイメージさせます。
氷やガラスから反射される虹色の光はとても鮮やかで、これもまた切ない気持ちにさせます。

夏は一年の中でもっとも色彩豊かな季節なのです。

まとめ

以上をまとめると、過去の夏作品、夏休みの経験による記憶から哀愁を作り出していたという考察の結果になりました。
「一夏の思い出」という時がありますが、とても限定的な儚さを感じさせます。

心理学者のユングが提唱した「集合的無意識」という心理学用語があります。全ての人々が先天的に持つ無意識のさらに深い領域を指します。
一夏の思い出はほぼすべての日本人が経験してきたはずです。そこから生まれた夏に対する集合的無意識が働いているのではと考えてしまいます。

私は黄昏時の夕陽を見るとひどく切ない気持ちになります。これも普遍的なものであり、集合的無意識からきているのではと思っているのですが、それと同じことが夏に対しても起こっているのではと思います。

夏は暑い日々が続きますが、楽しい美味しいものも沢山あります。(ご時世的に今はひどく制限されていますが・・・)
肥やしになっている風鈴でも出して、気持ちだけでも夏の涼みを感じたいと思います。